2020年2月26日水曜日

高2EUミニシンポジウム

こんにちは。金蘭千里ブログです。

今日は2/18に高2生対象に実施された、
神戸大学ジャンモネCoEC主催 高校生向けEUミニシンポジウム
についてお伝えします。

毎年この時期に行われているEUミニシンポジウムですが、
レシーバーを付けて同時通訳により日本語と英語で
講演内容を聴くことができます。

今回はESS部の生徒5人が英語で司会進行をしました。

最初に、事前にEUについての理解を深める講義をされた
理事長の辻本先生から開会のあいさつがありました。

1つ目の講演は、駐日欧州連合代表部学術協担当の
リチャード・ケルナー氏による
「EU in the world and EU-Japan Relation」でした。
英語で公演され、それを同時通訳で聴きました。

EUには欧州27か国が所属し、5億人が生活し、24の公用語が存在します。
理念の1つは「対立でなく協力」で、ヨーロッパの平和維持を目的とし、
産業で協力することにより戦争をなくそうという考えです。
もう1つの理念は「国境のない生活」で、ユーロによる単一市場、
人、物、お金が自由に移動できる環境を実現しています。

EUは、国際社会において、平和、人権、気候問題、人道支援での活動を
行っており、サミットにも参加しています。また、日本とは共通課題を
多く持ち、経済面での自由化協定や人道支援等でパートナシップ協定を
結んでいます。

講演後、生徒から、英語で質問があり、
ブレグジットについてイギリス人としてどう思うか?
EUの組織のリーダーの選出は先進国中心で不公平になっていないか?
などが議論されました。
氏は、EUで仕事をしているので残念でありながら、一方で英国人として
国の決定には賛同している。また、リーダーは各国から委任された代表
が議会の中で投票するので民主的に決められていると回答されました。

2つ目の講演は、神戸大学先端融合研究環の藏重久弥氏による
「放射線シュミレーションGeant4とその応用」でした。

放射線とは、高エネルギーの粒子のことであり、原子の崩壊で生まれ
たり、宇宙線の中に存在し、電場により人工的に作ることもできます。
放射線をぶつけることで物質にエネルギーが加わるので、DNAに当て
て2重螺旋を切ることで突然変異を起こし、細胞を癌化させたり、
逆に癌細胞を破壊したりすることができます。これを医学に応用して
放射線治療を行っています。

講演後、放射線への不安からか次のような質問がありました。
福島の原発事故で放射線量が上がっていると思うが大丈夫なのか?
飛行機では被爆する量が多いとのことだがなぜなのか?また大丈夫なのか?
抗ガン治療の際に、正常な細胞に当たってしまうのではないか?



氏の回答は次のようなものでした。
年間で100msv(ミリシーベルト)放射線を浴びると癌化するが、地域
ごとに存在する放射線量が異なるので、事故後の福島と関西が同じ
レベルであり、問題がない。また、1万㎞上空では大気が薄く、放射
線が遮断されないので被爆するがそれは0.2msvほどであり、CT検査
では6.9msv、X線検査で0.6msv、ブラジルが20msvであるが、それ
でも生活上問題がない。治療時の放射線の出し方は、事前に計算し、
力の加わり方や角度をコントロールすることで調整している。

3つ目の講演は、神戸大学大学院国際文化学研究科の新川匠郎氏による
「ドイツにおけるポピュリズム:ヨーロッパの多文化社会の課題に
ついて考える」でした。

ドイツは、地続きの国境により、1/4が移民のルーツを持つ国です。
また、大戦での人権侵害への反省から、難民の受入れに積極的です。
近年、教育レベルが低下したり、移民の多い学校で暴行事件が起こ
ったことなどから、多文化の否定・偏見が生まれてきて、難民・移
民の受け入れに反対する政党も出てきました。
(難民の数は2008年3万→2016年75万→2019年17万と推移)

ドイツへの同化を求める伝統主義と事実上の多文化が混在する中、
どちらかに偏ることなく統合していくことが課題であり、
ドイツ語の習得・民主主義の共有を図る、政策に移民の意見を反
映させる、労働上の接点で共同生活する中で互いを理解していく
方向で動いています。

講演後、生徒からの質問では、移民反対の政党が勢力を増すと、
EU離脱などの動きにもなりうるのか?と質問が出ました。
氏からの回答は、どういう理由ならば離脱になるだろうかと自分で
考えてみることが大事なことである。国内的には、課題が明確にな
り取り組みが起こっている、国外的には、ドイツはヨーロッパ統合
の中心であったので、立場上離脱できないだろうとのことでした。

最後に、神戸大学ジャンモネCoE代表の吉井昌彦氏より、閉会のあいさつ
がありました。また、最後の質問に言及され、現実としては、離脱には
加盟国の承認が必要だが、ドイツはヨーロッパ経済の中心であるので、
承認されず離脱できないだろう。また、イギリスの場合は、各国が離脱
を許可したのでブレグジットが実現したとの補足がありました。

同時通訳の臨場感を味わえた貴重な体験だったことと思います。
少子高齢化による移民受け入れ問題は、日本の問題でもあり、
グローバル化が急激に進む現在の直近の課題でもあると思います。
また、物理の本格的な内容もありましたが、質問も活発にあり、
非常に充実したミニシンポジウムでした。
大学進学を目前とした高2生達は、普段体験できない、本格的な
学問の世界を目のあたりにして大いに刺激を受けたことと思います。

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きんらんせんりでー 2/29(土)(中止)

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