配られたのは、バナナの写真が並んだカードゲーム。青バナナから過熟で真っ黒になったバナナまで、コミュニケーションをとりながら順番に並べるというルールです。お互いがどのバナナを持っているか分からないまま、言葉で自分のバナナの熟した程度を言語化していくのは、かなり大変です。
小倉先生や發知先生からもらったヒントを生かして、「そばかすのような斑点が……」「スーパーなら20%引きのシールが貼られているくらいの黒さで……」とか、生徒たちも知恵を絞って熟し具合が伝わる表現を探し続けます。何に見立てるか、どう喩えるか。講義で「お医者さんには国語力が必要」とおっしゃっていた意味が、ゲームを通して身に染みます。また、そもそもどこから熟しすぎなの? といった基準のつけようのなさは、まさに病理診断の線引きの難しさそのものなのでした。
午後の高校生の部は、問診体験です。といってもさすがに病気の問診はできませんから、先生方が患者役になって、お悩みをきいてあげるというワークになりました。いつも相談に乗ってくれる先生から相談されるという体験。各チームには医学生の付き添いもありました。いざスタートとなっても、最初はなかなか適切な質問が思い浮かびません。信頼を築くコミュニケーションは、適切な問いを立てるところから始まるのですね。授業でも試験でも、答える側に回り続けていると、ちょっと気づきづらい視点かもしれません。応接の接ぎ穂がなくなった都度、医学生の方のアドバイスが差し出され、徐々に問診がスムーズになっていきます。「初対面の人相手だと、未だに緊張しちゃうんです」「この年になっても、まだ女心というものが分からなくて……」先生方も、わりと率直に患者役を演じてくださいました。この記事を書いている私は「プレゼントをするのが苦手で……」という相談をしましたが、プレゼント好きの女子生徒が、大変参考になるアドバイスをたくさんくれました。生徒から教われることはやはりたくさんあるなと感じ入るひとこまでした。本当に、助かった。
カルテの型は「SOAP」。S:主観的情報、O:客観的情報、A:評価、P:計画の四つの要素で組み立てるのが基本なんだそうです。各班ごとにこれにのっとって、カルテの発表をしました。鋭い観察の光る班、意外な専門知識を駆使する班、病名の付け方が冴えている班、成果にも個性がよく出ていました。